2019/05/30

長期投資では、株価下落を悲観する必要はない

令和時代がスタートして日本も含め世界株式市場は、冴えない状況が続いている。これまで堅調であった米景気にも陰りが見られ、利上げの雰囲気は消え、米長期金利も低下し、為替もやや円高で推移している。米中貿易摩擦に加え、メイ首相辞任に伴うイギリスの   『合意なき離脱』リスクも高まってきた。短期的に見れば、どう考えても株式市場に明るい材料はあまり見当たらない。

しかしながら悲観してみたところで、何の解決策にもならない。長期投資においては現在のような株価下落を悲観する必要はなく、たんたんと自分のやるべきことに集中するべきである。

世界一のアクティブ運用会社、キャピタルグループのレポート『長期投資の着眼点』にもあるが長期的な視点に立てば、株式市場は上昇時期は、下落する時期よりも長く、長期的には投資家に果実(リターン)をもたらしている。下落局面を悲観することなく、むしろ追加投資のチャンスと捉えるべきである。

人生においても良い時と悪い時があるが、投資においても同様である。正しい方法で長く継続投資すれば時間とともに、いい方向に向かっていく。この本質をしっかりと頭に入れて感情を一定に保つことが大切である。

2019/05/29

確定拠出年金の賢い活用法2

今日は、お世話になっているクリニックがお休みであるため、昨日に続いて確定拠出年金について考えてみたい。

資産運用は、【運用金額】【運用利回り】【運用年数】の3つで決まるのだが、確定拠出年金に関していえば、運用金額と運用年数は、制度によってあらかじめ決まっているため、運用利回りだけが決まっていない(不確実)ということである。資産運用において運用利回り(リターン)を決定づける要素は、次の3つである。

【銘柄選択】【投資タイミング】【資産配分】

確定拠出年金は、皆さんの毎月の給与から積み立てられるため、投資タイミングは、あまり関係ない。銘柄選択に関してもかなり制限があるため、結論をいうと確定拠出年金の運用利回りは、資産配分で殆ど決まるということだ。

資産配分、英語ではアセットアロケーションというが、これによって運用利回りの大部分が決まるのだ。確定拠出年金制度(会社によってかなり違うものの)において、これも大きな問題であるが選択できる投資信託のラインナップが限られており、本当にいい投資信託(特にアクティブファンド)が採用されていないことが多いのだ。よっていいアクティブファンドがメニューにない場合は、コストの安いインデックスファンドを中心にポートフォリオを組み立てる必要があるのだ。

さて資産配分は、どのように決めるのが正しいのか?

投資の世界でよく言われているのが、100-年齢=株式の比率という公式である。

つまり30歳の人は、100-30=70であるため株式:債券=70:30
   60歳の人は、100-60=40であるため株式:債券=40:60
といった具合である。

この公式の根拠は、若い人ほど働ける期間(稼げる期間)が長い、つまりリスク許容度が高いため、リスクの高い株式の比率を高めても良いという意味である。60歳の人は、働ける期間が短いためリスク許容度が低いためリスクの低い債券を多めにするということである。

人的資産と金融資産のバランスが考慮されており、実に合理的な考え方である。最近、5年間のマーケットを見ると、全体的に株式市場が堅調であった一方で、アメリカの利上げなどによる金利上昇で債券価格は下落した。株が上がって債券が下がった局面で経験の浅い投資家は、債券を売って株を買ったほうがいいと考えがちであるが、これはやってはいけない行為と言えるだろう。株が上がると債券が下がること(逆相関)で全体的なリスクを抑えているわけで、これこそが分散投資の効果である。

個人もGPIFやイエール大学基金のように基本ポートフォリオを決めて、それを維持していくことが資産運用で成功する秘訣である。

ただし昨日のブログに書いたように、日本やドイツなど一部の先進国ではマイナス金利という異常な状況が続いており、つまり先進国の国債などの投資妙味がないことを踏まえると上記の公式はあくまでも一つの目安とする程度が望ましいだろう。個人的に私自身の基本ポートフォリオは、株式:債券=100:0である。(リスクが大きいため、くれぐれも真似をしないでください。)

私自身は、定年退職がなく、健康であれば生きている限り収入があるため、運用資産が一時的に大きく下落しても追加投資できると考えている。株式の下落リスクを十分に理解したうえで株式100%と決めている。

当社のお客様にご提案しているポートフォリオは、その人のリスク許容度を見極めたうえで110-年齢=株式もしくは場合によっては120-年齢の場合もある。私と同様に100%株式という方もいる。特に若いうちは、日々の価格変動など気にしないで、長期的にリターンが期待できる株式中心の基本ポートフォリオを考えるべきである。

ちなみにここでいう株式とは個別銘柄ではなく、適切に分散された株式型投資信託の意味である。(続く)

2019/05/28

確定拠出年金の賢い活用法1

来週4日から3日間、お客さまである大手広告代理店で確定拠出年金(401K)セミナーの講師を務めさせていただく。まだまともに歩ける状態ではないが、低周波の電気治療のリハビリに通い、左足の治療を進めているところだ。

さて確定拠出年金に関しては、当社でも年金制度を導入し、私も上限の毎月55000円を世界株式の投資信託1本で積み立てている。平均寿命が延びて人生が長くなった今、確定拠出年金制度を上手に活用することは大きな武器となるだろう。定年年齢も徐々に65歳~70歳に引き上げられる結果、確定拠出年金の運用もそれに合わせた設計に変わっていくと思われる。

将来の人生設計において大変重要な制度にもかかわらず、確定拠出年金に関してアドバイスする人は殆どいない。偽FPのような人はいるが、真のプロフェッショナルはほとんどいないのが現状である。これは確定拠出年金のセミナー講師をやっても経済的なメリットがないことも影響していると思う。

当社のお客様には長年、確定拠出年金の運用についてサービスでアドバイスをさせていただいているが、最初から上手に運用している人はまずいない。みんな誰かに聞いて適当に商品を選んでいるだけで運用戦略が全くないのだ。

まず最初に確定拠出年金の運用は、個人で取り組んでいる資産運用とポートフォリオを一体化させることが基本と考えている。(本当に運用が分かっている人は、その必要性はない。)つまり個人の資産配分と確定拠出年金の資産配分を一本化することで、自分の基本ポートフォリオが完成するのである。

例えば公的年金(GPIF、残高約150兆円)の基本ポートフォリオは、以下のとおりである。立派なホームページがあり、全ての情報がディスクローズされているので、見てほしい。

公的年金の基本ポートフォリオ
国内株式25% 国内債券35% 外国株式25% 外国債券15%

最新の運用状況も確認できるが2018年度第3四半期は、昨年末の世界的な株価下落によって14兆円超の損益となっている。このような状況になるといつも野党の政治家などが騒ぎ始めるのだが、リスクを取らなければリターンは生まれない。2001年運用開始以来、現在までの累積の収益は、56.7兆円で資産残高は、150兆円。年率+2.73%の運用成績となっている。2018年第3四半期の下落で運用成績は冴えないものの、長期投資によって56兆円を稼いでいるのだ。

ちなみに公的年金の目標利回りは3.2%程度であるが、驚くことに基本ポートフォリオにおける株式の比率は50%である。近年のマイナス金利の影響で国内債券35%の部分、金額で約50兆円の運用資産からは、リターンは殆ど期待できないため、株式をポートフォリオにしっかりと組み込まざるを得ないのである。

マイナス金利の国内債券を買わざるを得ないのは国民の共有財産である公的年金のジレンマであるが、個人は何もリターンが生まれない国内債券に長期投資する必要性は全くないのだ。それにもかかわらず多くの人が国内債券をポートフォリオに組み込んでいる。実にもったいないのである。

個人は、国内株式 外国債券 外国株式の3つの資産クラスで基本ポートフォリオを構築するべきである。これがまず基本である。(続く)

2019/05/26

資産運用を始めるタイミング

人生初の左足ふくらはぎの肉離れで殆ど歩けないため、ブログを更新することにした。

長年にわたって個人投資家にアドバイスをしてきた経験上、資産運用を始めるタイミングはとても重要であると考えている。資産運用を始めるタイミングを間違えてしまうと、預金不足から資産運用を継続できないからである。

私の反省点でもあるが、当初、資産運用は早く始めたほうが良いと考えていた。しかし、それは資産運用の現場を長年経験した今、間違いであったと最近、思いなおしている。

20代の若いビジネスパーソンが私のところに資産運用をしたいと言ってくる。理由を尋ねると、なかなかお金が貯まらないから、何らかの形でお金を積み立てたいという理由が殆どである。つまり、ひと昔前の財形貯蓄の代わりのようなものだ。

一見、素晴らしい心構えかつ取り組みのように思うのだが、内実は、一部のよほど精神力の強い人を除いた多くの若者は、数年間積み立てを継続した後に預金不足から投資信託を解約して資産運用を継続することが困難となることが多いのだ。

これはお金が貯まらない人の典型例であるが、何年か積み立てをしてはお金が足りなくなって投資信託を解約する結果、長期投資が継続できないため、いつまでたってもお金が貯まらない悪循環に陥ってしまうのだ。

ごくまれに積み立て投資を継続できる若者もいるが、月々に数万円の積み立て投資を何年か継続したところで大して運用益も期待できない。NISAがどうこう言う前に仕事を一生懸命やったほうがいいと思う。積立投資を勉強のためにやる意義は全くないとは言えないが、正直なところ大して勉強にもならない。ある程度まとまった金額を運用することで経済効果が期待できるし、しっかりとリスクをとることで勉強にもなるのだ。

まとまったお金がない人は資産運用よりもまずは仕事に集中して、しっかりと預金するべきである。必要な預金を確保した上で個人的には、当社のお客様の多くがそうしているように1000万円以上の金額で運用をスタートするのが良いと思う。

さて当社のお客さまはビジネスパーソンとして活躍されている方が多いが、資産形成に成功してきた人にはある共通点がある。それは、若い時から仕事を一生懸命やっていること、無駄遣いをしないこと、つまり身の丈にあった生活を送っている人達である。

たまたま、うちの娘は、初任給と5月の給料が銀行口座に振り込まれてニコニコしてスマホのアプリで銀行口座の残高を確認しているが、そのような感覚は大切で、収入と支出を管理することで預金することが可能となるのだ。

最近、お客様になった30代の女性は、一生懸命仕事してきた結果、ふと気づくと30代半ばで3000万円近い預金が貯まっていた。社会人12、3年目で自力でこの数字は本当にすごいことである。

さすがにゼロ金利下で預金がだぶつき運用の必要性を感じていた頃にお会いし、当社に運用を任せていただくことになった。彼女は、とても仕事ができる人であることは間違いないが、社会人生活10年以上にわたって、預金の習慣が出来ている。このような人は資産運用を始めても途中で中断することなく継続することが容易なのだ。BUY&HOLD、正しい方法で長期投資を継続できるため、将来的に大きなリターンを獲得することが可能となるのだ。

そもそも仕事に集中しているため日々の株価などの値動きには全く一喜一憂することがない。リスク許容度に見合ったポートフォリオ案に従ってたんたんと運用を実行している。彼女にとって資産運用は、これまでやってきた預金と同じ感覚であると思う。

彼女のような人は、日本ではまだまだ少数派であることは間違いないが、当社においては近年、彼女のようなお客様が徐々に増えており、新しい時代の成功者のモデルだと考えている。証券会社に入社した娘にも当社のお客様のように経済的に自立した人になってほしい。よって資産運用するよりもまず、しっかり預金をする習慣を身に着けることをすすめている。これが資産運用で成功するための一番の近道だから。

ひと昔前のお金持ちのイメージは、成功した経営者、医者、弁護士など年収が高い人のイメージかもしれないが、これからの時代は貯めた預金を元手に長期で運用できる賢明な投資家となるかもしれない。

2019/05/08

エドワードジョーンズ社



10連休を利用して、12日間、息子が留学するウィスコンシン州に妻と旅行してきた。息子は、大学入学前のプレスクールに通うため、アップルトンという人口が10万人にも満たない小さな街に住んでいる。

滞在中、日本人は、留学生以外全く見かけなかった。どこに行っても『アップルトンに何しに来たのか?』と聞かれるくらい日本人は珍しいようであった。

シカゴからマディソン(州都)に飛行機で飛び、マディソンから、Uberで2時間くらい北上してようやく到着したのだが、典型的な車社会のアメリカの田舎町で、街を歩いている人は、いない。人が歩く街の設計になっていないのだ。ただウィスコンシン州は、もともとドイツからの移民が多い地域で、ビールやチーズがおいしくて行ったレストランもレベルが高く、私の知っているアメリカの食事とは全く別物であった。ラストベルトと呼ばれる地域に隣接しているものの、人々の暮らしは非常に豊かで全米の中でも失業率が低い地域だそうだ。白人が多く、かといって会う人会う人外国人に対してフレンドリーで、治安も良い印象を受けた。最近、治安が最も悪いとされるデトロイトなどとは一線を画している豊かな州なのである。ウィスコンシン大学マディソン校があるマディソンも訪問したが、こちらもアカデミックでモダンな街でヨーローッパ風のおしゃれなカフェやレストラン、ショップが数多くあり、非常に活気に溢れた雰囲気であった。日曜日にもかかわらず大学のキャンパス内は、大学生がカフェやレストランでパソコンを開いて、真剣に勉強していたのがとても印象的であった。

こんな素敵な街が中西部にあったのか?とびっくりした。さて前置きが長くなったが、息子の住むアップルトンという小さな街を散策しているとEdward Jonesの看板を見つけ、思わず飛び込みで事務所を訪問した。残念ながらファイナンシャルアドバイザーの方は、不在であったがアシスタントの女性とお話することができた。

エドワード・ジョーンズ社は、セントルイスに本社があり、全米に1万店舗以上ある証券会社であり、ピーター・ドラッカーの書籍などでも良く紹介されている知る人ぞ知る世界で称賛されている証券会社である。

写真の事務所も他と同様、ファイナンシャルアドバイザーが一人、アシスタント一人で運営されている。アップルトンにあるこの店では、お客様350名程度を一人のアドバイザーが担当しているそうだ。

当社バリューマネジメントのビジネスにおいて参考とした証券会社であるが、実際に訪問してみてローコストで一人のアドバイザーの生産性が高いことが容易に想像することができた。

昨今、日本の証券会社もようやく無駄な店舗を縮小、再編するなどして、従来の営業体制を見直ししているが、エドワード・ジョーンズのファイナンシャルアドバイザーは、一人事務所においてアドバイザーがかかりつけのドクターのように責任をもってお客様に寄り添い、転勤などもなく長くいいおつきあいをしているのである。

当社のビジネスも日本とアメリカの違いはあるものの、エドワードジョーンズ社のいいところは積極的に見習っていきたい。バリューマネジメントも2006年創業以来、素晴らしいお客様に恵まれ、最初の店舗はエドワードジョーンズにも負けない成功を収めていると思う。次の店舗をどのように育てていくのか?が今後の当社の課題である。思いがけず世界一の証券会社をアメリカの田舎町でみつけて、いい刺激をもらった。

Bostonでインフレを実感

  昨年7月に続いて先週プライベートで ボストンに一週間程度滞在したのだが、あらためてアメリカのインフレと円安ドル高を実感した。昨年よりも確実に物価は高くなっていた。 まず家族4人でノースエンドのイタリアン人街にあるTrattoria I’ll Paninoに行った時のこと。 炭...