2022年も残り3カ月。新型コロナウイルスによる中国経済の減速、長期化するロシアのウクライナ侵攻、そして世界的なインフレに対する各国中央銀行(日本や中国を除く)の急速な金融引き締めを受けて、世界経済の景気後退(リセッション)懸念から株式市場も債券市場も全面安の展開となっている。
以前の投稿でも述べたが現在のマーケット環境は、2000年~2002年のITバブル崩壊、NY同時多発テロ事件、SARSが起きた時期と類似しており、かなり厳しい。長期投資家にとって、今の不安定なマーケットは、ストレスとなることは間違いないが、長期投資を成功させるためにはこのような難局を乗り越えていく必要がある。
あくまでも私見であるが、世界経済が来年2023年中に景気後退(リセッション)に陥ることは間違いないだろう。しかし、この景気後退は、あくまでも景気循環における景気後退。
過熱した経済を放置するとバブルが大きくなるため、現在進行中のインフレを退治することは、ある意味で健全である。アメリカは、1980年代の日本のバブルような事態を避けるため必死に行動している。
当初FRBパウエル議長は、インフレを過小評価していたため慌てて金融引き締めを行っているのだが、もはやソフトランディングは不可能で多少の痛みを伴っても物価の安定を優先するという方針である。金利上昇を受けて株も債券も調整しているものの、金融市場は危機的な状況ではなく、現時点でリーマンショックのような金融危機に陥る可能性は極めて低いだろう。
景気は、循環する。よっていつの時代も景気はピークに達した後スローダウンし、景気後退する。景気悪化は、どこかで止まり、また景気は回復する。ずっと景気が良いことはないし、悪いこともない。ただ景気が良い期間は悪い期間よりも長いため、マーケットは上昇する年のほうが下落する年よりも多いのである。
リーマンショック以降、長らく続いた金融緩和によって、金融緩和マネーは、株式市場に流れ、ハイテク関連株を中心に資産価格を押し上げてきたのだが、今は金融引き締めによってマネーが逆回転している。マーケットの調整によって投資家心理は悪化し、これらが個人消費や住宅販売を低迷させ、実体経済をじわじわと悪化させる。今後、企業業績の悪化が鮮明になってくるとマーケットは、さらに調整する可能性もあるが、今後は企業やセクターによって株価に明暗が分かれるだろう。景気にかかわらず強い企業の株は上がっていくし、弱い企業は下がる。また長期投資家にとっては良いニュースであるが金利が高い(価格が安い)債券への投資妙味が出てきている。我慢強くバランスの取れた資産配分で投資を継続することが大切である。
近年、不安定ながらも株式市場は概ね堅調であった。NISAとかIDECOで投資を始める人が増えていることはいいのであるが、知識もないままにただNISAとかIDECOというニンジンにつられて投資を始める人も増えてしまった。ネットでは投資の素人ユーチューバーなどによって『S&P500に投資していれば儲かる』といったような安易な考え方が、散見されているが、とても危険な考え方であると思う。
世界一の投資家バフェットや賢人チャールズ・エリスらが言いたいことは、自分で銘柄選択したり、質の悪いアクティブファンドを買うくらいならインデックスファンドを買ったほうが良いと言っているのであって、これを買っておけば投資がうまくいくとは言っていない。当たり前であるが、そんなことで成功できるほど投資は単純ではないのだ。
ベルリンの壁崩壊後、冷戦が終結して以来、アメリカを中心としたグローバル化が進展してきた。しかし、ついにこの大きなグローバル化の流れは終焉したようだ。グローバル化の進展によって世界の工場 中国から安い労働力を背景とした商品を消費して世界経済は成長してきた。またグローバリズムの進展とは対照的に国家の財政赤字が積み上がり疲弊する中、米テック企業GAFAMの影響力が増し、国家に代わって覇権を握ってしまった。コロナ禍で国家の財政はますます疲弊した。GAFAMに関しては、かつての東インド会社以上の影響力だと言えるが、あまりに大きくなりすぎた。例えばメタ(旧フェイスブック)は、個人情報やプライバシーの問題でビジネスモデルの転換を余儀なくされており、メタバースで収益を得るにはまだまだ時間がかかりそうである。誰の目からも明らかであるがFacebookやinstagramなどSNSも終わりを迎えている感じ。『天まで伸びる木はない』ということだろう。GAFAMに関しては、終焉といっても今後も優良企業であり続けることは間違いないだろう。しかし、これまでのような高い成長は望めないということ。自然な流れであるが成長企業から成熟企業に落ち着いていくと考える。
さてグローバル化は、経済を成長させたが結果的に格差を生み、アメリカ国内ではグローバル化に乗り遅れた白人労働者者層の票がトランプ政権を誕生させた。イギリスのEU離脱もグローバル化終焉の象徴と言えるだろう。
米中摩擦やロシア問題、そして新型コロナの影響も大きいが世界は分断し、世界は内向きとなり国内回帰する流れとなった。世界的なインフレは、グローバル化の終焉とリンクしているため、今後、落ち着いたとしてもなかなか2%のレベルに落ち着くことはなさそう。最近起きている変化はベルリンの壁以降続いたグローバル化からの大きな転換である。この数年で時代は大きく変わった。
毎日のように新聞記事には企業が中国から撤退し、アメリカや東南アジアに移すとか、トヨタのロシア撤退などグローバル企業再編の記事に溢れている。世界は、巨大化した中国や危険なロシアとどう向き合うのか?という問題に対応せざるを得ない。サプライチェーンの再配置が世界規模で起きており、このような地殻変動をチャンスに変える企業が今後、世界をリードしていくかもしれない。
世界は様々な問題が山積している。この諸問題を解決していく企業は、どのような企業なのだろう?GAFAMに代わって世界をけん引する企業がこれから出てくるだろう。
あたりまえであるが世界の繁栄は平和の上に成り立っている。2030年に向けて、世界がより平和で、より良くなっていくことを願っている。